拝啓ペンフレンド様

LINE」というものが普及してかなり経つようだ。
私はそれを利用したことがないが、「多機能な電子メールソフト」とでも理解すればいいのか。
その多機能ゆえに人間関係(特に年少者の仲間内社会)にまで影響を及ぼしていると聞く。イヤな話ではある。
まあ、私の周囲ではそんなものを使用しているという話は聞かない。
連絡などは従来の電子メールで十分だと考えているからだ。

電子メールとは「文通」の一種で、「日本人は古来から親しんできたものだけに浸透が早かった」という説が、メール普及の初期にはメディアなどでよく語られていた。

文通で思い出したことである。

私の子供時代、漫画雑誌や学年別雑誌(小学○年生、中○時代など)をはじめ、若年者向け雑誌には「ペンフレンド募集」という欄が読者コーナーに掲載されていた。
個人情報保護の考え方が発達した現在では考えられないことだが、住所氏名が堂々と誌面に公開されていたのである。
私は経験がないが、遠くに住む知らない人と手紙のやりとりだけで交流するというのは、楽しそうでもあり、ちょっと怖いようでもある。
新幹線や飛行機が今ほど身近ではなく、子供や若年者にとっては金銭的にもハードルが高いだけに、遠くの土地へのあこがれもあって、ペンフレンドとの「交際」に夢を描いたのかもしれない。

私は地元九州の高校に通っており、修学旅行では東京を訪れた。
その時、幾人かの同級生が「自由行動の時間に東京に住む異性のペンフレンドと会う」と言っていたことに私は驚いた。それがまさか文通の趣味(そう、当時は”趣味”と見なされていたのだ)など持っていそうもない者だっただけに余計に衝撃を受けた。

ネットの普及で時間的・物理的距離感が縮まったようだが、その半面で直接コミュニケーションをとることへのハードルは上がっているように思う。
電話の普及後はいきなり人の家を訪ねることはしなくなり、事前に電話をするようになった。
メールが普及すれば、電話さえはばかられるようになり、電話の前にメールを出す。

20年ほど前には、休みの日や深夜に友人と電話で長話をすることもあったが近頃は無駄話さえメールにしている。
ちょっとそのころのことが懐かしくなった。 

今は誰しも忙しいようで、気持ちに余裕をなくしているようだ。

郵便による文通のような、きわめてゆったりしたコミュニケーションも気持ちの余裕を取り戻すにはいいかもしれないと感じている。

Original 2 mar 2017

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