気になる言い方
私が、違和感のあるその言い方を初めて聞いたのは20年ほど前に愛知県に出張に行った時だった。
規模の大きなホテルにチェックインした時のこと。 フロント係員から発せられた 「~でよろしかったでしょうか?」 という言い方だ。 何のことだったかは忘れたが、まだ伝えていないリクエストについてそう言ったのである。 「よろしかったでしょうか」というのは、その事柄をすでに伝えたことが前提で、確認の意味で言う表現だ。 それがいきなり出て来ると、脈絡のないことを言われたようで非常な違和感を持った。 「それはまだ伝えていませんよ」と言おうとしたが、不意を突かれて黙ってしまったのだ。 ひょっとしてこの地域独特の言い方の可能性もある。 クレーマーとやらが増えたのは、この20年ほどの「失われた」不況の時代と合致している。 思うに、これは客とのトラブルを避けるためのテクニックなのではないか。 時間軸を曖昧にして「言った、言わない」というトラブルを極力回避する余地を残している、とも言えるだろう。 「よろしかったでしょうか」はその後しばらくして少しずつニュアンスを変化させながら各地に拡がり、 "丁寧な表現"として客商売で多用されるようになったようだ。 最近では、飲食店に入るなり「お一人様でよろしかったでしょうか」などと言われるようになっている。 当初のような違和感こそ消えたものの、私などは「素早く返答しろ」というニュアンスを感じて、それはそれで気持ちが悪い。
Original 18feb 2016
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