リストラというやつは

 現在は仕事から引退して隠居の身である私だが、会社を退職する前の数年間は若い頃に担当していた職場に戻っていた。管理職から一般職への「異動」である。
 ここで改めて現場に身置き、以前とは別の視点で企業社会を観察し直す機会を得たことは、隠居への道筋を決意させるのに強い後押しとなった。
 この国で20年ほど行われてきたリストラという行為は、「不況」とやらによる経営的な問題を解決しようとする企業論理だと理解はできるが、その結果として人間同士と企業同士の信頼関係を壊し、人の精神面に深い傷を残した。
 つまりは社会に「傷をつけた」のである。
 さらに・・・
 会社への行き帰りの電車で、同世代の人(50代)の姿を見かけることがほとんどなくなっていたことに気づいたときには慄然とした。
 リストラは現役世代の中にあった年齢層の厚みをも消し去ってしまったのだ。
 同じグループの中で年長者がいないということは、経験から生かされる知恵の継承が失われることを意味する。その結果起こったのは職場環境の荒廃だけである。それがあちこちの企業で起こっていたことは想像に難くない。
 経済指標に表れる程度の復活は早いかもしれないが、社会に残した目に見えない傷が回復するのはそう簡単にはいくまい。

Original oct 23 2015

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