旅の準備とは



 仕事仲間や同僚たちが出張の手配に苦慮している姿をよく見たが、そのたびに「なぜ、旅の準備ほど楽しげな作業を嫌うのか」と思っていたものだ。仕事とはいえ、である。
 私がこの「作業」をいとわないのは、子供時代から「旅とは心底楽しいこと」というイメージが胸に焼き付いているからだ。
 夏休みや春休みが来ると、頻繁に両親とともに旅行へ出掛けた。旅行の予定を聞かされた瞬間から出発当日を指折り数えて待ったものだ。
 さすがに宿の手配などは両親まかせだったが、自分なりに荷造りをすることは最高にわくわくする体験だった。
 旅の準備、または旅行そのものを苦にする人は、ほぼ例外なく子供時代の旅の経験が乏しいようだ。

 そこで同僚らから私に手配などを助けてくれとの要請が来る。自分が出掛ける出張でなくてもどこか心躍る作業だった。
 切符を手配しながら目的地までの道中を想像し、宿泊場所のイメージを描く。
 それでいて感謝を受けるのだ。
 後年、母に「小さかったころ連れて行ってもらった旅行のおかげで、僕は出張の準備は苦にならないよ」と伝えたら、心底うれしそうな顔で喜んでくれた。

Original oct 13 2015

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