京都にて

 私の現役時代の最後の方は、毎年12月は2週間ほど出張がある勤務日程だった。
 その最後の年、関西での出張をようやく終えた私は東京への帰途に京都へ立ち寄った。
 数十年前に東京の大学に進学した私だったが、同じ受験の年に京都の大学からも合格証書をもらっており結果的にそちらは入学辞退となった。

 もう仕事から引退を決意していたそのときの私は、ふとそれを京都で思い出したのだ。
 そうだ、例の大学へ行ってみよう。
 電車を乗り継いで受験時以来のキャンパスへ向かった。古風な煉瓦造りの建物は当然ながらそのままである。
 学内掲示板などを見つつキャンパス内を歩きながら、「もしこちらに来ていたら、私はどうなっていただろう」と想像した。
 出会った人々も違えば仕事も違うはずだ。全く別の道を歩んでいたのは間違いない。ただ、どちらがよかったのかはわかるはずもなく、そんな想像をしても仕方がないことではあるが。
 ここを訪れてみて、こちらに来なかったことが何となくすまないような気もした。だがセンチメンタルになるのはよそうと思い直し、早期引退への決意を自らに確かめた。

Orginal 23 dec 2015

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