メトロポリタン美術館にて



ニューヨークにあるメトロポリタン美術館には充実した日本美術のコレクションがある。
いちコーナーというイメージよりもはるかに大きなスペースを持ち、主に中世から近世の屏風絵、甲冑、陶磁器など、遠い昔に国内から流出した名品・良品が数多く展示されている。その保存状態はいずれもすこぶる良好だ。
その展示スペースの内装は完璧に伝統的な日本家屋(邸宅)のしつらえになっており、外国でよく見る中国との混同などはない。
それだけに、そこで長時間鑑賞していると「どうも上野の東京国立博物館にいるようだ」という錯覚を起こすほどである。
  初めて訪れた時は真夏であった。
  鑑賞後に外へ出ると冷房との温度差で頭がふらりとした。
  美術館から歩いて帰れる位置のホテルにどうやって戻ったかは覚えていない。
 いつの間に寝てしまったのか…
 
   気づくと美術館へ戻っていた。
  改めて外へ出ると、そこはなぜか上野公園であった。
あれっ、私はニューヨークへ来ていたのではなかったのか。
やれやれ、数日前にJFK空港に飛行機で着いたのは幻だったのか。
 そう思いながら、広小路にあるなじみの店でとんかつを食べてから地下鉄を乗り継ぎ自宅まで帰った。
その後は疲れて一眠り。
夜中のつもりで起き上がると、そこはやはりニューヨークのホテルのベッドの上であった。
  どこからが夢だったのか。
あまりに暑かった2000年7月、ニューヨークでの記憶の断片である。

Original 24 jan 2016

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